日々雑記

麦の光

おなかがいたいので家に帰ります

朝起きて「あ、会社行きたくない」と思う日がある。いつも行きたくないけれど、「あ、会社行きたくない」と思ったあと「無理、ほんと無理かも」「おなかいたい」「気持ち悪い」みたいに思考が続いていく日があって、こういう日は休む。だって無理だもん。明日がそういう日のような気がする。

 

今日、生まれてはじめて自分の書いた字に酔って吐いた。あちらこちらの方向にいろんな模様が配してあって、赤色のペンで細かくたくさん字を書いていたから(思い出すだけで具合悪くなりそう)。目の前にはブルーライト100%のPCの画面が光っていて、紙には赤色赤色赤色……赤色の字って、それだけで具合を悪くさせる何かがある。そしてかなりギリギリの状況だったので、赤い字を書くたびに「どうにかしないと(どうにかならなかったらどうしよう)」と頭の中で繰り返し、自分にプレッシャーをかけ続けていたことも、多分影響している。誰にも言われていないのに、自分が自分に辛い言葉をかけるというのは、もうやめていきたいですね。大人だし。意外と、心配していることは怒らなくて、心配していなかった方のルートで大変なことが起きたりするし。

 

駅でしゃがみながら、いろんな人の足を見て、帰りたいなーって思った。煌々と白い蛍光灯が眩しくて、電子音の音楽、アナウンス、誰も知らない「個」「個」「個」…… 少女の頃の私はこういうことにたくさん救われてきたけれど、もう本当に今は大人なんだなって思った。意味のある仕事をしたいとか、そういうことよりも、ただただ大切な人とできるだけ長い間一緒にいたい。仕事終わって、スーパーに寄ってゆっくり食材を選んで、言い合いしたり、くだらないテレビ見て笑ったりしたいな、と思いました。

 

朝起きて、鳥の声が聞こえない。家を出て、排気ガスと工事の埃に咽せてしまう。ぎゅうぎゅうの電車。朝から人身事故のアナウンス。10年ずっとこういうことが辛かったけれど、これから気にしなくなる日ってくるのかな。ずっと平気なふりをしていたけれど、結局平気になれなかったし、もう十分。

夜明けのすべて

この間、精神の不安定さについて人と話していたとき、相手の人が「そういう人って、自分が普通の状態じゃないことも分からないじゃない?」と言った。

素直にうん、と言えなくて、黙ってしまって、心のなかで「こんな世界で普通でいられるあなたの方が、多分おかしいよ」と思った。

 

戦争が起きて次々と亡くなっている人がいるのに、私はお腹が空くし、

雪の日、駅の地下で段ボールにくるまって眠っている人がいるのに、

私は立ち止まりもせず、自分の家に帰っていく。

毎日、どうして自分だけが無事なのか分からない。

その人たちは、私と別の世界の人じゃない。

同じところに一緒に生きているのだから、

いつか私にも同じことが起きる、と思う。

 

自分ではどうにもならない症状や考え方があるし、

どれだけ頑張っても絶対にできないこともある。

普通の世界で、自分が普通にできていると疑わない人にとっては

『夜明けのすべて』はよく分からないところもあるのかもしれません。

でも、わたしは本当に観てよかった。

 

二人がお互いを知ろうとしたり、

できることがあるかもしれない、と思ってお節介したり、

そういうことの根本にあるのは100%の優しさで、

100%の優しさだから、恋愛関係になることもなくて、

お互いを尊重しあっているのが伝わってきた。

 

夜景を星空のように撮ったり、

山添くんを包む麦色の夕日だったり、

映画的な美しさに感動しながら、

優しい物語を観ていました。

 

 

 

健気さについて

『カラオケ行こ!』を2度観た。

同じところで涙があふれてしまって、どうしてこんなことで泣いているのかも分からなかったけれど、健気、という言葉に辿り着いてからいろいろなことが腑に落ちた。

 

けな-げ【健気】

(ケナリゲの転)

①勇ましいさま。勇健。狂言、棒縛「ーなことでござる」

②しっかりして強いさま。すこやかなさま。健康。蒙求抄(1)「ああーな老者かな」

③殊勝(シュショウ)。天草本金句集「よい主人は智慧ある者を使ひ、ーな者を使ひ」

④(子供など弱い者が)けんめいに努めるさま。「ーに働く」

広辞苑モバイル版より)

 

聡実くんはあの雨の日、初めて狂児に会ったときから、誰にも感じたことのない感情を抱えていて、ふと「愛は与えるもんらしいで」という言葉を聴く。そうして、少しずつ感情が形を持ち始める。心の中のある部分を占めているその感情を、無視できなくなっていく。

 

頭で考えられなくなるほど惹かれるものに出会った時の人の姿ーー。そういうものを見ていると、あまりに健気で胸がいっぱいになる。性別や年齢は関係ない。もちろん男の人同士だから良いわけでもない。男の人と女の人でも、そもそも人ではなく植物や動物に対しての気持ちでも、どんな風でも良い。そのことを考えて、会いたくて、どんなことがあっても隣にいることができて……。そのどうしようもない健気さに、美しい光を感じるのだ。

 

「結婚しようなんて 別れの言葉よりひどい」というのは大島弓子の漫画の台詞だけれど、どれほど幸せそうに描かれていても、「なんだ、結局自分の人生のためなんだ」とツッコみたくなるような「愛」はたくさんある。それが悪いということではないけれど、この映画で描かれている愛は、そういうものとは全然違う。生活のためとか、子どもが欲しいとか、将来のためとか、現実をうまく積み重ねて調整していくことなんてできなくて、ただ突然で、逃れられないものだった。そんな関係は現実的に実を結ぶことはないのかもしれないが(もしかしたら狂児はそのことを知っているのかもしれない)、いちいち振り回されて動揺する聡実くんが美しくて、胸がいっぱいになる。

 

『ファミレス行こ!』の10話も読んだけど、どうなるのかなー。ハッピーエンドでもそうでなくても、まだもう少し、二人の話が読めるのが楽しみ。

 

 

 

やさしい人のこと

牛腸茂雄。36歳で夭逝した、背丈の低い写真家。
彼の写真を初めて見たとき、この人は、人が好きだと思った。幼い少女を撮っても、短いスカートを撮っても、しかめ面を撮っても、カップルを撮っても、無条件に "生" を肯定してくれていた。
 
そうして牛腸茂雄の写真を片っ端から見ていくうち、
たった一枚のセルフポートレイトを見つけた。
猫背で、落ち着かなそうに手を腰に添えている。
窓がやたら大きく見える。光が射している。
その写真の彼は笑っていなかったけれど、話しかけたら笑ってくれそうな気がした。
 
今日、帰り道に寄った書店で、彼の2番目の写真集『SELF AND OTHERS』を見つけた。
大切に抱えて帰ろう。
これは少しずつ世界が広がっていくことの素晴らしさを味わえる本だから。
 
 
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